やすらぎの道から少し入った寺町界隈はしっとりと風情のあるエリア。この場所で小料理屋として営業を始められたのが平成12年のこと。入り口の暖簾をくぐり、飛び石を超えて靴を脱いで中に入ると、真っ直ぐ延びる座敷のカウンターから、女将が着物姿で迎えてくれる。
元々ご主人が寿司屋だった関係で、魚の目利きは間違いなし、もちろん魚だけでなく食材には深い見識があり、それは会話の中にも表れる。
この日も「なまこ」について聞くと「普通は茶ぶりといって、お茶を使って煮ると柔らかく、日持ちもするようになるんですけど、私の父(料理屋を営んでおられた)はいつも生きたなまこを切ってそのまま食べてたんですね。この方がなまこ本来の味がすると思うんです・・・」。
また「鱈の白子」について話を振ると「関西では雲子といいますが、蜘蛛みたいで嫌がる方もいはるんです、だからうちでは・・・」と続く。江戸時代の漆塗りの皿など骨董の器についても話を聞く価値あり。
今回はコースではなく一品をいただいたが、注文の合間に銀杏を出してくれたり、そろそろお腹いっぱいと思っているとフルーツを出してくれたり、さりげない心遣いに心が温まる。確かな腕と丁寧な仕事、女将さんの人柄に惹かれて足しげく通う常連客も多い。

いくつかから選ぶのだが、どれも気になったので3つともいただいた。濃厚でまったりとした自家製のあん肝。

鱈の白子をポン酢で。ここではきくわたと呼ぶ。菊の花にかぶせた霜よけの綿に見た目が似ているから。

生きたなまこ。後の2つがポン酢だったのでこちらは土佐酢で。新鮮で旨味たっぷり、こりこりとした食感。

クロマグロの若魚(引き下げて持ち運べるサイズ)。尾の部分をさいころ状にして粘りの強い大和芋で。

魚が焼きあがる間にサービスで出していただいた。柿の葉を敷いて秋らしさが感じられる一品。

赤アマダイよりも柔らかく旨みが強い高級魚。骨の多い頭の方が美味。ぱりぱりとした鱗もいただける。

山形から取り寄せたラ・フランス、皮ごといただけるシャインマスカット、小さなチョコレート菓子。

住所 | 奈良市寺町10 | ||
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地図 | |||
電話番号 | 0742-22-2624 | ||
営業時間 | 18:00ごろ~翌0:00ごろ | ||
定休日 | 日曜日 | ||
駐車場 | 無 | ||
ホームページ |
【店舗外観・店内・メニューなど】
【2009年3月にいただいた 5000円のコースにいくつか一品を追加したもの】。

空豆の塩茹で、たけのこ木の芽和え、白魚の卵とじ。旬のものの組み合わせが楽しいスタート。

10cmはある隠岐の岩牡蠣(身がとろっとしてうまい)、石鯛とかつおのお造り(写真は二人前)。

じんわりと出汁を含んだ柔らかい大根に白みそを乗せて。江戸期の染め付けの器もさりげなく。

新鮮なホシダイをうろこをつけたまま焼いてある。カリカリした食感を楽しんで。(写真は8人前)

〆のご飯は海鮮丼。まぐろ、車海老、鰻(蒲焼き)、いかなどの海鮮を乗せた贅沢な一品。

わかめとたけのこのおすまし。きちんと出汁をとった上品な味。常連さんが多いのもうなずける。

宍道湖で獲れた大きな鰻を白焼きでしっかりした歯ごたえの中にふわっとした甘みが広がる。

麺類もそばやそうめんなどいくつか揃える。写真の温かいうどんは白みそ仕立てのつゆで。
基本、紙のメニューはなく、本日の食材・調理法から食べたいものを選んでいくが、あくまでも参考になれば、2009年のメニュー写真を載せておく。